書籍の内容
野生動物と近代品種とをつなぐ在来家畜は、家畜化過程の本質を考える上で重要であるとともに、品種造成の遺伝資源としても有用である。本書は、永年の アジア全域での実地調査を軸に、農学以外にも人類学・考古学等の知見を盛込み体系的に記述した、世界に類を見ない書。12家畜種の系譜の全体像に迫る。
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担当編集者より
野生動物は、(ダーウィンの進化論で見るように)自然淘汰圧の下で進化してきました。一方、家畜は家畜化による「進化要因の質的変化」、すなわち、自然淘汰圧から人為淘汰圧へと移行する中で世代を重ね、今日に至っています。家畜化が始まってわずか数千年ですが、人為淘汰圧は著しい生物学的変化をもたらし、もはや人の管理なしには生存することすら覚束ない近代品種や実験動物のような家畜も現れています。
その一方で、アジアには、ニワトリ、ブタ、ウシ、スイギュウなどの野生原種や近縁野生種が現在も生息し、家畜集団との間に遺伝子交流が認められる地域もあります。すなわち、アジアは、野生原種から近代品種に至る連続系列(家畜スペクトラム)のほぼ全容が今日もみられる、世界で稀な地域と言えます。そして、この家畜スペクトラムの中央に大きく位置する動物が「在来家畜」であり、今日世界中で利用されている多種多様の近代品種を派生させた源泉です。つまり、在来家畜は、野生動物と近代品種とをつなぐ位置づけとして捉えられ、連続する家畜化過程で動物と人とに何が起こるか考える上で重要であるとともに、品種造成の遺伝資源としても有用な存在です。
本書の編集主体である在来家畜研究会は、アジア全域で半世紀近くにわたり在来家畜に関する実地調査研究をおこなってきた、理系文系を含む多様な研究分野の研究者を会員とする団体です。本書はこの実地調査による広汎な成果を軸に、農学以外にも人類学・考古学・博物学等の知見を盛込み、家畜の系譜の全体像を体系的に記述しており、畜産学を越えて家畜の本質を探究するわが国初の「家畜学」の書とも言えます。
執筆者一覧
(所属は刊行当時rのものです。)
天野 卓(東京農業大学教授) 岡本 新(鹿児島大学教授) 黒澤弥悦(岩手県奥州市・牛の博物館主任学芸員) 佐野晶子(岐阜聖徳学園大学・短期大学部元助手) 田中和明(麻布大学講師) 田中一栄(東京農業大学名誉教授) 田名部尚子(麻布大学客員教授) 田名部雄一(岐阜大学名誉教授) 角田健司(昭和大学客員教授) 並河鷹夫(名古屋大学名誉教授) 西田隆雄(カセサート大学客員教授) 西堀正英(広島大学准教授) 野澤 謙(京都大学名誉教授) 野村こう(東京農業大学講師) 橋口 勉(鹿児島大学名誉教授) 前田芳實(鹿児島大学・教授) 万年英之(神戸大学准教授) 山縣高宏(名古屋大学助教) 山本義雄(広島大学名誉教授)
書籍の目次
はじめに
第Ⅰ部 家畜化と家畜
Ⅰ-1.家畜とは何か? 在来家畜とは?
Ⅰ-2.動物家畜化に至る要因
Ⅰ-3.野生動物と家畜をつなぐもの
Ⅰ-4.家畜化による生物学的変化
Ⅰ-5.近現代における新家畜造成
Ⅰ-6.比喩としての家畜・家畜化
第Ⅱ部 家畜種各論
Ⅱ-1.ウシ:多源起源と系統
Ⅱ-2.スイギュウ:2大系統の起源と地域分化
Ⅱ-3.ウマ:日本在来馬の由来
Ⅱ-4.ブタ:多源的家畜化と系統・地域分化
Ⅱ-5.ヒツジ:アジア在来羊の系統
Ⅱ-6.ヤギ:東アジアの在来ヤギ
Ⅱ-7.イヌ:日本とアジア犬種の系統
Ⅱ-8.ネコ:東アジアのferal cats
Ⅱ-9.ニワトリ:原種から家禽へ
Ⅱ-10.アヒル:東アジアにおける家禽化と品種分化
Ⅱ-11.ウズラ:家禽化の歴史と現状
Ⅱ-12.ジャコウネズミ:実験動物(スンクス)の創成
在来家畜研究会現地調査の概要
編集出版委員会委員等一覧
あとがき



